愛せなくて、ごめんね

 あなた様のことは、お慕いしておりました。
 ですがそれは、儚く散らされた。
 あなた様のことをよく思わない、公爵様に。


 わたしは、しがない子爵令嬢に過ぎない。
 あなた様のお屋敷で、侍女として働かせていただいておりましたが、それはもうできません。

 あなた様は気にすることはない、と言ってくださったけれど。

 あなた様は私を愛していると、言ってくださったけれど。

 それでも私はあなた様の枷になりたくないのです。


 公爵様のお手つきになって、妊娠して、子供が生まれた。

 子供が出来てしまったとき、絶望しかなかった。
 私が愛する人はあなた様しかいなかった。もちろん、貴族であるあなた様と結ばれるなどといった夢は、抱いていなかったけど。

 公爵様にされたとはいえ、私がしたことはあなた様への裏切りに思えて、あなた様から逃げました。



 あの時できてしまった子供は、もう10歳になった。
 日に日に公爵様に似てきて、気が狂ってしまいそう。
 平常時は母に見てもらってはいるけれど、それでも自分の子。
 愛したい、と思うし、愛さなければ、とも思う。

 それでもこの子は、私の憎悪を向ける先にしかならない。



 あなた様も、この子も、愛せなくて、ごめんね。  

inserted by FC2 system